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読書ノート5 はじめての治具設計

最近読んでた本です。

 

はじめての治具設計

著:西村仁(1962) 発行:2019/12/26

本の紹介

最近まで僕は製品の試験治具を作る仕事をしていたので、こんな本あったんだ!ってかんじで見つけてすぐ手に取りました。

 メインのターゲットは工場の生産準備の仕事をしている人っぽいですが、機械設計の基礎知識が足りないけどメカ開発っぽいことをすることになり、運悪く先輩もいないので、ノリでやって派手に失敗して覚えるしかない・・・みたいなレベルで困っている人にもわかりやすく教えてくれる本なのでおすすめです。

僕は情報科を悲惨な成績で出て、専門を捨てたタイプの人間なので、かなり助かります。

工場の改善に興味がある人にもおもしろいと思います。

興味のあったところだけまとめていきます。

 

汎用的な考え方・基礎

イデアを考えるコツ

・アイデアは知識、情報の「組み合わせ」

・既存の知識、情報を1つでも多く得ること。

・知らなければ使いようがない

・書籍や技術雑誌以外に展示会や工場見学が情報を得る手段として効果的

・知識や情報を組み合わせる作業はアナログで行う

・いきなりではなく、紙に手書きで構想を練る

・「アイデアはアナログ」「作図はデジタル」

これはゲームに置き換えるとわかりやすいかもしれません。

いきなり構築画面でデッキを組むのではなく、メモ用紙に構想を書いてみる。

知らないカードは使いようが無いので、あまり使われないカードの情報も頭に入れておく。

改めて意識してみると、だいぶアイデアがでやすくなる気がします。

 

そもそも治具とは

jig:加工における工具の位置決めと固定を意味する英語

の当て字。

自動化のレベルは4段階。

 ①手作業

 ②治具

 ③半自動化

 ④完全自動化

①に近づく程、開発期間が短く投資コストが少なく製品の仕様変更や多品種に対応可。

④に近づく程、品質UP、作業時間のバラつきの少なさUP。

目指すのがどの段階かを意識する。

 

 治具について

治具は「手段」、「目的」ではない。

治具を作る目的を明らかにする方法

 解決の難しさを問わず、困りごとを洗い出す。

 項目を出したら優先度付け。大きな効果が見込める順、導入できるスピード順など
・機械設計はトコトン机上で検討。

治具設計は人が主体なのでやってみてわかることが多い。

 スピード重視で考えたらすぐ実行。

P14のコラムを元にしたまとめなのですが、本には生産用の治具目線でこのコラムが書かれていて、僕の作りたい評価治具とは違った話になっていたので、原文とだいぶかけ離れたまとめ方になっています。

僕の作った治具を使う人からは、作業性が悪かったり、固定が上手くいかないから直して欲しいという要望がガンガン来るけど、対応するためのアイデアが出ない・・・アイデアは出たけど、めちゃめちゃお金がかかるから実行するべきかわからない・・・みたいな悩みを僕は抱えがちです。そこで治具の「目的」を明らかにすることを意識して、困りごとを難易度問わず洗い出す方法は効果的だろうなと思って、このコラムは気になりました。

 

 位置決め

角形状の位置決めに使える3・2・1の法則

ピンで位置決めするときに最初の面を3点で保持、2つ目の面を2点で保持、3つ目の面を1点で保持、と3つの面を3本2本1本で保持すると、完全に位置決めできるというものです。

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ピンじゃなくて平面を当てれば良いんじゃないか?と思ったんですが、

加工精度のバラつきでモノが完全な平面になることはないので、平面で抑えても完璧に位置が決まることは無いから精度が必要な位置決めではこうするということだそうです。

一面を抑えるときも、3点ではなく、4点で抑えるときは、1点は浮いた状態になってしまいます。

4本脚の椅子や机が接地できるのは、椅子や机がたわむからだそうです。

カメラの三脚もそれで3本足なのだそうです。

僕は平面で受ける治具しか作ったことが無かった・・・どころかピンで受ける発想すら無いようなレベルだったのですが、皆こんなこと意識してたのか・・・ってかんじです。

 機械科だと習うんですかね?それとも授業中も遊戯王してたから知らないのでしょうか?()

 

 丸形状の位置決め

角は3・2・1で位置決めしますが、円筒形状は下記で位置決めします。 

・Vブロック+1点保持+締め付けorキー

・底を3点・横を2点・締め付けorキー

 

 ↑V字ブロック

 そして、角でも丸でも、3・2・1の最後の1を省けば横にスライドさせられたりします。

 

 面当たり方式の位置決め

一体型治具は角を逃げ加工する。

できるだけ大きいRにして「以下」と図面で指示するのがセオリーのようです。

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フライスやマシニングセンタで材料を削って加工するとき、ドリルで垂直に加工するのは無理なので、角はカーブにしないと加工の難易度が跳ね上がるためですね。

これは僕もこういう3Dモデルで業者に依頼をしてしまったことがあって(依頼した加工業者が僕よりレベル高くて、治具の目的を理解して直してくれて問題なかったですが)、上司にこんなんじゃ作りづらいだろ!と言われたのを覚えています。

具体的な指示の仕方は知らなくて、今まで「Rはお任せです!」みたいな指示をしてしまっていたので、本を見習って大きいRを指定、それ以下という業者が悩まなくて済む指示をしようと思います。(猛省)

もう1年早く知りたかったです。

というか、加工業者でノウハウのある人に見てもらいながら数か月くらい働いてみたいです。

 

テーパーピン

治具と台に斜めの穴を空け、側面が斜めっているピンを入れて、台から治具を外しても、テーパーピンを基準に毎回同じ位置に来るにできます。

ただのボルトで位置決めしようとすると、ボルトと穴の隙間分治具が動いてしまうのですが、テーパーピンなら隙間が無くなるまでピンが入り込むので、隙間0になり、つけ外ししてもめちゃめちゃ正確に同じ位置を再現できます。

外さなくていいなら、「しまりばめ(圧入)」(太いピンを細い穴にハンマーで叩いて無理やり入れて隙間0にする方法もあります。

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こういうテーパーピンリーマーと呼ばれるものを、下穴に打ち込んで加工するそうです。

昔、上司に「台と治具の位置がずれちゃってて大変~」と泣きついたら、「テーパーピンを使え!」と言われて、「何ですかそれ?」「テーパーピンも知らんのか!~・・・・」で、結局話を理解できなかったため、テーパーピンは使えなかったことを思い出しました()。

 

異物対策

糸ごみやホコリが挟まると精度に影響します。そのため逃げ加工をします。

組み合わせ治具なら、こんなかんじで、床面に面取りしてあげるだけで、ホコリを逃がすスペースが手軽にできあがります。

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単発の治具ばかり作っていたので、偶然これ原因の失敗はしていませんが、全然意識できていなかった観点なので、気を付けます。

 

つづく

 とりあえずおすすめの本です。