パンダをいくらで買いますか?

パンダをいくらで買いますか

発行:2013/8/26
著者:野口真人
1962年生まれ。京大経済学部卒→みずほ銀行外資投資銀行→株式会社プルータス・コンサルティング設立(従業員数50名、資本金3500万円、平均年齢36歳※ネットの求人参照)
グロービス経営大学院で10年以上ファイナンス基礎講座を担当。

感想

ファイナンス(金融)の特に企業価値の測定手法について書かれているのですが、初心者向けでわかりやすいのに内容が深くて凄い本でした。
今のところ僕は投資に対して、調べるのが面倒なのであんまり手を出したくないけど、人生で一度は経験しておきたいなくらいのスタンスなのですが、紹介されているファイナンス理論は物事を考えるときに汎用的に役立ちそうなものだったので読んでよかったと思います。

調査

本の内容とは関係なく調べた内容です。

MBAとは
前に読んで良いと思った「外資投資銀行のエクセル仕事術」の著者も経歴にグロービス経営大学院を書いていて何だろうと思っていましたが、日本でMBAを取れるビジネススクールのようです。
MBAというと海外で取得するもので、持ってる人というとトヨタの社長とか大企業の経営者っぽい人をイメージしていたのですが、日本でも学位は取れて毎年5000人も取得者がいるそうです。
MBAのコスト
グロービスだと学費は300万円程度、海外のMBAだと700万円〜2000万円程なので格安です。
そもそも普通の学校の学費の相場もよくわからないので、てきとうに思い浮かんだ東大と早稲田の学費を調べてみるとこんなかんじで
東大学部      4年 2,425,200
東大大学院     2年 1,353,600
早稲田学部(理系) 4年 6,236,000
早稲田大学院    2年 2,322,000
※早稲田は学部:基幹理工学部修士:機械科学で計算しました。

日本のビジネススクールは馴染みの大学の修士号よりは高いけど、経営者を目指せる社会人ならあんまり高いと思わず払えちゃいそうな価格設定になっていますね。

大学の学費について
私立大学は高いと聞きますが、調べてみるとたしかに高いですね。
一般的な2人兄弟の家庭で私立に通わせて理系の大学院まで行かせようと思うと2000万円に迫ってしまう計算です。
老後90歳までは2000万円で生活できちゃうらしいですもんね。
さらに運が悪いと留年して余計に200万円かかったり、就職できなかったりする可能性まであります。奨学金が必要になるわけですね。

ピックアップ

本の内容をピックアップ

価格の算出方法
・原価法
用意するのに何円かかったかで算出。世話代で算出すると初々しいパンダより年老いたパンダの方が高くなり適正価格を反映させない。
・取引事例比較法
類似の売買事例を参照する。株式、不動産、オークション、チューリップバブルなど実力以上にものの価格が高騰・暴落する。
・収益還元法
そのモノから生まれるキャッシュフローに基づいて価値を評価する手法。
パンダなら「パンダがいることによって増える入園料収入ーパンダの飼育コストー初期費用」がパンダから生まれるキャッシュフロー。中古車ならレンタカーとして使用したときいくら稼げるかで判断。

収益還元法(DCF法 Discounted Cash Flow)
この本では収益還元法の考え方について詳しく解説している。
収益還元法は「活きているモノ」の価値を測る。
インカムゲイン:家賃のように定期的に入ってくるお金
・キャプタルゲイン:資産の値上がりによって入ってくるお金
収益還元法はインカムゲインを対象とする。
下記の3つが分かれば計算できる。
キャッシュフローの金額(Amount)
金利(割引率)(Rate)
キャッシュフローが発生する時期(Time)

割引現在価値
未来で発生する収益は利率を計算し現在価値に換算する。
金利1%だとしたら1年後にもらえる100万円は割引現在価値約99万円。

金利(割引率)
ファイナンスの世界では、国債金利をリスクフリーレートと呼び、一番リスクの無い金利と定義する。それよりどれだけリスクが高いかで金融商品金利は決まる。国債より高い分の金利をリスクプレミアムと呼ぶ。
パンダは寿命や人気のアップダウンなどリスクが高い。著者は経験則から10%程度のリスクプレミアムになると判断している。しかしこれが数%変わるだけで現在価値が大きく変わるので、何%に設定するかが計算で一番難しい部分。

永久年金型キャッシュフローの現在価値
現在価値=毎年のキャッシュフロー÷割引率
で求められる。証明は本に記載されているが省略。
・年金型キャッシュフロー
キャッシュフローには一定期間キャッシュフローが続く。リース料、債券の利子など
・永久年金型キャッシュフロー
ほぼ永久に続くキャッシュフロー。マンション収入など。(何十年も先のキャッシュフローは割り引かれて0に近づくのでマンションも永久と見なして計算しても問題無い)

企業価値の算定
営業利益に着目する。経常利益(特別利益や特別損失を含んだ利益)は考慮に入れない。

フリーキャッシュフロー
企業の投資活動(材料調達や設備導入)の総額と売り上げの総額を差し引きしたもの。
ただし税金がかかる。
・FCF(フリーキャッシュフロー)=営業利益×(1-税率)
ここから企業価値を見積もる。
企業のフリーキャッシュフローは株主や債権者に還元する必要がある。
しかし、フリーキャッシュフローを投資に回すことで投資額以上のキャッシュフローが手に入ることを期待し、株主は目先のキャッシュフローを減らして投資することを容認する。
ちなみに2019年の日本の法人税率は23.4%らしいです。世界的に引き下げ傾向にあり平成元年に40%だったところからどんどん下がっています。日本はOECD経済協力開発機構)加盟国の中で高い順で14位。アメリカは35%で1位だったところからトランプ政権で2018年頃21%にしたそうです。日本もここ10年内にアベノミクスで下げたらしく、全然意識してなかったけど最近めちゃめちゃ変わってるんですね。

運転資本(ワーキングキャピタル)

売掛金や在庫から買い掛け金を除いたもの」
売掛金が少なく、買い掛け金が多いほど都合が良い。
大きすぎると黒字倒産する。

投資のリスク
危険度合いではなく不確実性を意味する。少々期待リターンが大きくてもリスクが大きいとものの価値は下がる。

ROD(リターンオンデッド)、ROE(リターンオンエクイティ)
・RODは債権者の求める金利
ROEは出資者(株主)の求める金利
株主は投資したお金を返すように要求できないため、より大きなリターンを求めRODよりROEが高くなる。

WACC(加重平均資本コスト)
口座のお金について、どのお金は銀行から借りたお金でどのお金は株主から集めたお金でと分けて考えることはできない。そのためRODとROEを金額にの割合に応じて平均した値WACCが使われる。
WACC=ROD×(1-税率)×負債の割合+ROE×株主資本の割合
RODに税率をかけるのは、企業は金利を費用として計上できるため。

MM理論
資産2000億円、営業利益200億円の企業が2つあり、A社は100%株主資本、B社は50%株主資本(銀行の金利は3%)とし税金を無視すると、
A社は200億円の利益を2000億円分の株主に分け、B社は金利を差し引いた170億円を1000億円分の株主に分けることになるので、借金を多くしているB社の方がROEが高くなってしまう。
ただし利益が減っても金利は払う必要があるため、利益が60億円を切るとROEが逆転する。
借金をするとレバレッジを利かせた状態になる。
さらに、税金も考慮するとB社は30億円分の節税もできている。

投資の判断基準
投資によって得られるキャッシュフローの現在価値が投資額を上回るのなら投資すべき。この考え方はNPV法(Net Present Value=正味現在価値)と呼ぶ。
ただし割引率など変数が少し変わるだけで現在価値は変わってしまうので、楽観シナリオ、悲観シナリオを想定したり、感度分析を行ったりして判断する。

継続価値
6年かけて事業が拡大し6年目からフリーキャッシュフローが一定になるモデルを考えるなら、6年目で事業を売却する前提で計算可能。

 

参照