図解雑学プラスチック
著者:佐藤功(1942) 発行:2001
読みやすくてとてもおもしろかったです。
樹脂の分子構造から実用するための成形の仕方、利用方法までかなりわかりやすく解説しています。
工業系の仕事をしてるとかで、プラスチックに仕事で関わっていて、知りたいことをちょっとネットで調べても化学式が出てきてうんざりして見るのを辞めてしまうくらいのレベルの人にとてもおすすめです。
今、射出成型の本を読んでいるのですが、これを読んでからそっちに移ったおかげでかなり理解しやすいです。
他の本やネットの資料を読むための基礎知識が手に入る気がします。
2001年の本で、時代の変化もありそうなので、次はもっと新しい本も読んでみたいな~と思いました。
気になったポイント
◎熱可塑性プラスチック
熱を加えると塑になる。
→成形しやすく一般的に使用される。
鎖状の高分子が絡まってできている。
分子間力が大きいため水や油に溶け出しにくい。
高温になると分子の運動が激しくなり、分子間力が小さくなるため変形する。
◎熱硬化性プラスチック
熱を加えると硬くなる。
高分子が鎖状ではなく、塊上をしている。高温で分子運動が激しくなっても、その一部が飛び出すようなことがないため、高温でも変形しない。
分子構造
ポリエチレンの化学式
→H(CH2)nH
物質名 | nの数 | 室温での状態 |
メタンガス | 1 | 気体 |
エタンガス | 2 | |
プロパンガス | 3 | |
灯油 | 12 | 液体 |
ワックス | 約50 | もろい個体 |
ポリエチレン | 1000以上 | 強靭な個体 |
結合している原子が増え、分子が大きくなるほど、分子間の拘束が大きいため融点が高くなり、固くなる。
ポリエチレンは炭素原子の長い鎖に水素が付いた構造をしている。炭素部分を主鎖、炭素にくっついている水素の部分を側鎖と呼ぶ。
ポリエチレン以外のプラスチックも身近にあるものはほとんどは主鎖は炭素のみでできている。
石油は長さの短い炭素の主鎖でできており、石油の成分をつなげることでプラスチックを安価に合成している。
側鎖を変えることで違った性質のプラスチックを生成している。
ビニル化合物
炭素鎖2つで二重結合している状態の化合物。二重結合は結合を手をつないだ状態に例えると2つの手で炭素がつながっている状態で、片方の手を離して通常の結合に戻りやすい。
ビニル化合物のどちらか1つの炭素に水素以外の基を入れてプラスチックの特性を変えることが盛んにおこなわれている。
側鎖の分子量
側鎖同士はお互いに反発する。側鎖が大きくなると少し動いただけで隣の側鎖とぶつかってしまうため、分子が動きづらくなる。
分子が動きにくくなると、外から力を加えても曲がりにくくなる。
プラスチック名 | 側鎖 | 分子量 | 弾性係数[MPa] |
ポリエチレン | 水素 | 1 | 600 |
ポリプロピレン | メチル基 | 15 | 1400 |
塩化ビニール | 塩素 | 35.5 | 2700 |
ポリスチレン | ベンゼン | 77 | 3400 |
ベンゼンを側鎖に混ぜたポリスチレンはポリエチレンの6倍程度の力をかけたときにポリエチレンと同等の変位になる。
主鎖を変えるケース
より高性能なエンジニアリングプラスチックは主査の何個かに1個を酸素や窒素に変える。
そうすると主鎖が動きづらくなり、分子運動全体が不活発になる。
=融点が上がる、変形しづらくなる、溶剤が近づいても溶剤に分子が溶けづらくなる
主鎖構成 | 物質名 | 融点[℃] |
炭素のみ | ポリエチレン | 120 |
窒素挿入 | ポリアミド6 | 220 |
酸素挿入 | ポリアセタール | 180 |
ベンゼンを入れるケース
主鎖にベンゼンを入れると、さらに耐熱性が向上する。
ベンゼンはこんなかんじの化学構造。
安定した化合物でこのうち2つの水素を炭素鎖と入れ替えれば、炭素鎖に入れることができる。
「耐熱性プラスチック:「スーパーエンジニアリングプラスチック」と呼ばれるプラスチックには必ず主鎖にベンゼンが入っている。
ベンゼンを入れたアラミド樹脂は融点450℃、実際に使える温度が250℃くらい。
有機化合物の共通した性質として、400度くらいから分解が激しくなるため、これ以上温度を上げてもあまり意味が無い。
結晶状態
原子が規則正しく整列された状態。
結晶化した部分は分子間の拘束力が非結晶状態と比較して非常に強く、性能が飛躍的に向上する。
ただし、鎖状高分子の場合、分子が長いため、分子の端から端まで結晶化することはなく、多くても60%程度。
結晶部分と非結晶部分の境界で光が屈折するため非透明になる。
透明なプラスチック=非結晶性と判断できる。
結晶化のしやすさ
結晶化するためには動き回っていた分子が規則正しい位置に動く必要があるため、素早く冷却すると分子の移動が間に合わず結晶化度が低くなる。
結晶化核剤を混ぜると、その周囲から結晶化が進む。
同じ化学構造でも分子構造によっても結晶化のしやすさが変わる。
無機物強化プラスチック
アルミナ、ケイ素(シリコン)、炭酸塩、ガラス繊維などの無機物(炭素を含まないもの)を10~50%添加すると、強度が上がる。
成形するとき添加した無機物が溶融しないためムラが起きやすい。
力が繰り返しかかると無機物とプラスチックの間が剥がれ強度低下する場合あり。
親油性
物質の表面特性は親油性と親水性に分かれるが、プラスチックはほとんどが親油性。
空気中の水分を寄せ付けないため、静電気が発生すると静電気が空気中の水分を介して逃げられず表面にたまってしまう。静電気がホコリを吸い寄せるため、ホコリがたまりやすい。
表面を親水性にする添加剤が使われる。ただし添加剤は親水性のため水洗いで脱落する。
プラスチックの分類
A:結晶化核剤などの工夫をすれば結晶化する。
B:標準的な結晶性プラスチック
C:液晶性プラスチック(結晶性が強く、溶融しても分子間の拘束が残っている)
プラスチックは表のように分類可能。
2001年の本なので、価格はこの通りか不明だが、ネットを見てもだいたいこんな分類のされ方になっている。
+熱硬化性プラスチックでフェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタンなどもある。
飽きたのでまとめは終了。
次は表の中で特に自分が興味のあるプラスチックのことを掘り下げて調べてみたいなとうっすら思っています。